200万件以上のデータを整理~分析前のデータ整理が勝負を決める~

 経営に活きるデータ分析とはどのようなものなのか、どのような企業のどのような事例が存在するのかを知る目的で、サイト最下部に記載のURLにあった神戸製鋼所の事例について、自分なりに分析工程に焦点を当てて簡潔にまとめてみました。
 以下では200万件以上のデータを入念に調べ上げて整理し直した、IT企画部と生産現場のそれぞれの取り組みを紹介する。まずは、IT企画部の事例から見ていくことにする。

背景 (IT企画部)

 神戸製鋼所のIT企画部長Hは「分析ツールを導入する際の事前準備が、データ分析の成否を分ける」と語る。それまでは「データ自体は大量に収集していたが、分析できる状態になっていなかった」という。
 分析用に整理されていないデータとして、例えば、各事業部門で大型機械を操業するときに必要となる「潤滑油」の購買データがあった。同じ潤滑油でも異なる製品コードで登録していたり、製品名ではなく「潤滑油」「潤滑油一式」などと異なる表記で登録されていたりした。乱雑な状態のこの購買データは、2015年1月時点で200万件以上にも上った。

目的・手段 (IT企画部)

 データ分析のツールを導入した目的は、製造所での資材の購買データを分析することで、調達コストを削減することであった。2012年10月に、クリックテック・ジャパンのBIツール「QlikView」を導入した。IT企画部ではこれらの購買データを、分析しやすいフォーマットに加工し、整理し直した。

結果 (IT企画部)

 その結果、各事業部門の製造所が過去に購入した潤滑油の購買データを時期別、取引先別などのカテゴリー別で検索可能になり、安く調達できる時期や取引先瞬時の判断が可能となった。

 次に、生産現場での実例を紹介する。

背景 (生産現場)

 アルミ・銅事業部門傘下の長府工場(山口県下関市)でもIT企画部同様、事前の準備がデータ分析の成否を分けた。「どのデータを分析するべきかの判断は、現場の作業員でないと難しい」ともIT企画部長は語った。以前から圧延機にはセンサーが取り付けられており、温度や速度などのデータを大量に「収集・蓄積」はしていたが、どのデータを「分析」するべきかの判断は、現場の作業員でないと難しく、活用するためのが不十分だった

目的手段 (生産現場)

 生産現場の同工場では、銅版を薄く延ばす圧延工程での生産性を向上させるために、2014年1月にQlikViewを導入した。同工程では、圧延速度を上げれば時間当たりの生産量は増加するが品質にムラができてしまい、基準を満たさない粗悪な銅版が増えてしまう。したがって、生産性の向上には、品質を維持しながら圧延速度を速めることが必須であった。そこで、現場の作業員に事前にヒアリングを実施することで、要望を詳しく聞き、現場の経験則に基づいて必要なデータの整理や分析メニューの作成などを実施した。その後、ツールを用いて銅板の温度や速度などのデータを分析し、品質と圧延速度で構成された生産性を最大化する最適な条件を決定した。

結果 (生産現場)

 結果、従来は圧延時の条件を熟練の作業員が経験で判断していたが、データに基づいて条件をコントロールすることで、熟練の作業員だけでなく経験の浅い作業員も品質を維持できるようになり、時間当たり生産量を5%向上させることができた。

まとめ

 データ分析と聞くと、どんなデータからもすぐに結論を導けるといったスタイリッシュなイメージを抱く人も多いと思うが、実際は泥臭い作業であるデータの整理、いわゆる前処理が非常に肝心だということである。ひとえにデータ分析といえども、分析「手法」や「目的」は様々であり、それらに応じたデータに変換する必要があるため、このような前処理無しにデータ分析など不可能なことなのである。一言で言うと、ビッグデータを経営や業務に生かそうとする際は、「分析前に勝負は決まる」のである。

参考リンク
日経XTECH https://xtech.nikkei.com/it/atcl/ncd/15/030600012/

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